2008年11月20日木曜日

メッカ大巡礼


             記11月4日(火)
 朝7時前から大通りが騒がしい。
家のイブもすでにマンディーを済ませ、一緒に朝食をとると、私に家の鍵を預けて出かけてしまった。
どこにいくのか説明を聞いたが、新出単語で分からず。
私はそのままkantorへ。
職場は心なしか静かで、やっぱり今日はなにかイベントがあるらしい・・・
まだPLS課は誰も出勤していないので、他の課の人に大通りで一体何があるのかと尋ねてみた。
今日は、年に1度、メッカでの大巡礼を行いに行く人たちの出発の日だということだった。
メッカでの巡礼を行った人は、HAJI(ハジ)という称号を与えられる。
名前の前にHAJIがついている人は、もうメッカに行ったということのようだ。
このHAJIの称号を持っている人は、周りの人に尊敬され、一目おかれている。
宗教に疎いので正しいかどうか分からないが、現地の人に聞いた話では敬虔な信者をあらわすようだ。
ただし、この巡礼参加には、国家公務員係長級の給料1.5年分がかかる。
家のBapakの給料では、2年分以上と言っていた。
でも、メッカ巡礼の為には皆懸命にお金を準備するらしく、参加者はあとをたたない。
県で集まって大勢で参加するらしいが、現在は登録待ちでなかなか行けないそうだ。
 私の上司夫婦はまだ40代だが、すでに参加している。
かなりのお金持ちなので、若いうちに参加したようだ。
私の家のイブは昨年、仕事を退職したのでそれから行ったとの事。
このメッカ巡礼は40日ほどかかるらしい。

この様子を見てみたいというと、同僚が連れて行ってくれた。
県庁に6台の大型バスが並ぶ。
その前に数え切れないほどの人波。家族や親戚が集まり、涙ながらに別れを惜しんでいる。
子どもはもちろん、大人も男の人も、人目をはばからず大声をあげ涙を流している。
その様子はとても重々しく、家族中にとって大きな出来事を思わせた。
1ヶ月の別れは、こんなにも悲しさを感じさせるものなのかと、日本との違いを感じる。
お父さんの1ヶ月の出張に、こんな風に涙ながらに見送りをするのかなぁ?
私たちがインドネシアに出てきたときも、こんなにも大泣きする姿はなかった。
(涙をみせなかっただけかもしれないが)
私の感覚ではたった1ヶ月と思うけれど、この国の人たちにとっては、家族と別れて1ヶ月も過ごすなんて、涙なくしては別れられないのだ。

 今回の別れの場面を見ていて、すごく納得がいった。
私がここに来たとき、2年も家族と離れて寂しくないのか?なんでそんな思いをしてまで来たのだ?親には毎日連絡しているのか?などなど会う人ごとに尋ねられた。
もちろん、今でも時々尋ねられるが。
インドネシアに来てからまだ一度も家族に電話をしていないと正直に話すと、なんで連絡しないんだ!と結構真剣に怒られた。
今日の様子を見ていて、すごく合点がいった。
メッカが簡単に連絡の取れる場所でないということもあるが、この島の人たちにとっては旅行さえもあまり行くことがなく、家族とはいつも身近にいるもので、常に行動を共にするものなのだ。
 
バスが出発すると、人波が押しかけるように後を追っていく。
まるでお祭りの人ごみのようで、後ろから横から押されて歩いていく。
沢山の警察官が警備をしており、すりに注意をしてくださいと呼びかけている。
大通りは大渋滞で一般の車は動かない。道路はすでに見送りの人の車やバイクが停められており、動ける余地はない。
見送りの車1台に10人くらいの人が乗って、バスの後ろをついていく。空港まで見送りに行くとの事だった。
すごい行列で、これが空港まで続くのかと思うと、きっと大渋滞を巻き起こすのだろうという感じ。
この見送りのために、一体何人の人が動いているのだろう。
仕事どころではないようだ。
きっとどの職場でも欠勤者続出に違いない。
道路も大混雑で、通常の仕事はできないようだし。
 こういう行事のあるたびごとに、いちいち驚いてしまう。
ここまで大衆を惹きつける?イベントって、すごい。
参加者の関係者以外も、ひとめみにいこうと道路に集まっているのだから・・・
 運よく?私は県庁の敷地内にあった停車中のバスのそばでこの光景を写真に収めることができたのだが、帰ってきてからイブに話すと、何で中に入れたの?普通は入れないのよ!と言っていた。
友人のおかげか?
貴重な場面に出くわすことができたようだ。
今日のこの出来事は、すごく国民性を感じさせたものだった。

 夜に若い方のイブ(ATと呼ぶ)にこの写真たちを見せたら、「みんな泣いているねぇ」と言っていた。
日本ではあまりないなぁ・・・
と話すと、「あなたが日本に帰るときは私はもちろん、家中の人が泣くよ」
と言ってくれた。
イブも、「日本は遠いし、航空費も高い。だから、一度帰ったらもう二度と会えないかもしれないからね。」とちょっとしみじみ言われたときには、あらためて私は外国人であることを実感したのだった。
私たち日本人にとって海外旅行は普通にできることの一つだが、この国の人たちにとっては、夢のようなというと大げさだが、普通にはできないことなのだなぁと感じた。
だからこそ、外国人である私が何年もここに住むということは、現地の人の驚きの対象になるのだろう。
 まだまだ来たばかりと思っていた私だが、ちょっとだけ帰国の時の自分を想像してみた。
どんな気持ちで日本に帰るのだろうか・・・・
その日が楽しみだ。

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